~人間と自然、複眼で捉える都市の中の共生~
東京湾にはかつて広大な干潟が拡がっていました。そこは野鳥やカニをはじめ多くの生き物が暮らし、貝や海苔など豊かな恵みを人間にもたらす自然の宝庫でした。しかし近代から始まる埋め立てや開発により、干潟の90%以上が消えてしまいました。
そのうち現存する貴重な干潟のひとつが多摩川の河口に広がる干潟です。ここは大都市の中にありながら、身近に自然と触れ合える極めて稀な場所です。
TOKYO HIGATA PROJECTは、文明と自然の境界である多摩川の干潟を様々な視点から捉え、人と生物の共生を描くことを目的にしています。
干潟から誰も知らない世界が見えてきます。
多摩川の河口でシジミを獲るホームレスの老人。彼は捨てられた十数匹の猫と共に、干潟の小屋で10年以上暮らしている。80代半ばと思えない強靭な肉体を持つ老人は、シジミを売ったわずかな金で猫のエサと日々の糧を得ている。
(2019年 83分)
多摩川河口の干潟は狭い範囲に、多くの種類のカニが生息する貴重な自然の宝庫である。吉田唯義さんは、ここで15年に渡って独自にカニの観察を続けている。
吉田さんの視点はとてもユニークで、他の人が考えつかないような方法でカニたちの生態を調べている。
(2019年 68分)
東京と名のつく映画がまた1つ生まれた。東京はよそ者たちの集まり。日本の玄関口、羽田空港のほとりに辿(たど)りついた老人。自然の中で生きる姿は慎ましく逞(たくま)しい。経済優先の世の中で忘れてしまった誠を教えてくれる映画。刻々と変わっていく東京の中で、変わらない老人がいる。監督が4年に渡って見つめた一人の老人の暮らしと思い。丁寧に掬(すく)いとった東京の変容と老人の姿をぜひ見てほしい。
ピアニスト
泥・草地・アシ原に生息する蟹のキャラが総出演。エラ呼吸の蟹が干潮時でも横走りできる秘密、脱皮しながら成長する姿の神秘さ、月の満ち欠けが交尾を促す自然界に、夕日が沈む美しさにワクワク。
映像文化批評家